学ぶべきは「古典的現実主義」
(雑誌「選択2023年8月号」)
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国際外交の世界には「古典的現実主義」という言葉があるそうである。
外交における「古典的現実主義」とは、いくつかの視点と認識からなっている。
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まず第一に「人間社会は不確実性と緊急対応から逃れられない」という厳然たる事実があげられる。
ケインズは「人類の歴史の最大の法則は、それが予見不可能だということ」であると述べたそうだが、これは現実社会において経営者が直面する問題にも共通している。
なぜなら現代における企業経営において、経営者を悩ませる最大の事柄は、将来が予見できないということだからである。
この不確実性に起因して、常に緊急かつ最善の対応を迫られる経営者は、当然この不確実性から逃れることはできず、正に「古典的現実主義」に従って生きていかなければいけない。
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第二に「世の中には解決できない事柄がある」というある種の諦観である。
これは完ぺき主義の反対、脱完ぺき主義の考え方でもある。
この諦観に対する対応は「解決できない問題は管理、制御する」という現実主義的対応となり、これはまさに経営における「リスク管理」に相当する。
すなわちリスク管理とは、起こりうるリスクを撲滅することではなく、想定しうるリスクを管理し、制御することによって被害を最小限に抑えるべき考え方である。
というわけで、わたしたち経営者は、まさに「現実主義的対応」をすることで、この複雑怪奇な現代社会を生き抜かなければならないのである。
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